もうひとつの浅草キッド コンビ時代の終わりに“たけし”と“きよし”が交わした言葉

レビュー

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もうひとつの浅草キッド

『もうひとつの浅草キッド』

著者
ビートきよし [著]
出版社
双葉社
ISBN
9784575311310
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

もうひとつの浅草キッド コンビ時代の終わりに“たけし”と“きよし”が交わした言葉

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 コンビはどちらかが突出すると、どうしても評価が突出した方に傾く。しかし相方あっての漫才なのだ。本書はそのことがよく分かる作りになっている。著者がオレあってのツービートだと主張しているわけではない。自然に、なるほどそうだと思わせるのである。

 くすぶっていた二人が浅草で知り合う。コンビを結成するも、そのスタイルはどの客とも合わない。たけしは仕事をすっぽかし、たまに来ても酔っていて、エロと暴言で客とも雇い主ともケンカになる。

 しかし不思議なことに、ヤケとも思えるマシンガントークに芸人仲間が興味を示す。評判を聞いたマスコミがやってくるが、とてもそのネタはテレビでは使えないと言う。せっかく起用されてもありきたりのネタでお茶を濁すしかないのだ。

 ツービートが彗星のごとく世に出たと思っている人達はこの紆余曲折に愕然とするだろう。そして漫才ブームがやってくる。アルファベットで書く“MANZAI”だ。これで兆していた人気に火がつき、一気にブレイクする。しかし札束が転げ込もうとも、それまでが長かった二人には売れている実感がない。そういうところにまたリアリティがある。

 著者は相方の才能を見抜いていた。「こいつをなんとか上手く機嫌良くして、舞台に出したら面白いんじゃないかな」との思いでやってきた。劇場とお客の両方からクレームがくる中、「それよりも相方の好きなようにやらせておくほうがチャンスがあるような気がした」とも言っている。

 別々の仕事が増えた頃、コンビの地方公演が久々に入る。宿で差し向かいになった時、相方が酒の飲めない著者にビールを注ぎ、「きよしさん、いろいろ悪かったね」と言う。「わかってるよ、わかってる!」と著者は胸の内で呟く。二人はこの時“ツービートの時代”が終わることを悟るのだ。グッとくる。

新潮社 週刊新潮
2016年6月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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