『痴人の愛』『細雪』などの名作で知られる文豪、谷崎潤一郎は“食魔”と呼ばれるほどの美食家だった。「三日に一遍は美食をしないと、とても仕事が手につかない」と、洋食から中華までうまいものを食べ尽くし、その美食経験は数多の名作に昇華された。
作品には牛鍋やビフテキなど料理の描写が多く、著者はこれを「性欲の象徴」はたまた「食を通して人間の業を描いた」と記す。さらに、谷崎小説の悪女を「よく食べる」といった視点でとらえるなど、従来にない読み解き方をする。巻末には京都の「瓢亭」など谷崎が愛した名店も紹介されている。(新潮新書・760円+税)
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2016年5月29日 掲載
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