『納豆のはなし』 石塚修著

レビュー

3
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納豆のはなし

『納豆のはなし』

著者
石塚修 [著]
出版社
大修館書店
ジャンル
文学/日本文学総記
ISBN
9784469222463
発売日
2016/04/25
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『納豆のはなし』 石塚修著

[レビュアー] 高野ムツオ(俳人)

 納豆ほど嗜好(しこう)が極端に分かれ褒貶(ほうへん)著しい食べ物も数少ない。本書は、その納豆が文学にどのように扱われているか、わかりやすく紹介、解説したもの。納豆が登場するようになったのは江戸期。俳諧興隆による。納豆には乾燥した塩辛納豆と糸引き納豆があるが、俳諧に多いのは後者を用いた「納豆汁」。汁として食べるのが一般的だったらしい。

 冬の季語でもある。川柳にも納豆売りの声や納豆を叩(たた)く音が彷彿(ほうふつ)する句が多い。当時の随筆から、叩き納豆から次第に粒納豆へと需要が変わったことがわかる。納豆は明治以降、小説にもしきりに登場するようになる。太宰治、夏目漱石、林芙美子、泉鏡花、小林多喜二など多くの作家が、庶民の哀歓を醸し出す小道具として一役を与えている。

 納豆嫌いの正岡子規や宮本百合子の作品にも納豆売りが出てくる。北大路魯山人は混ぜる回数のみならず醤油(しょうゆ)の垂らし方まで徹底したが、柴田流星の随筆に登場する江戸っ子は納豆飯を辛子ごとあっという間にかき込んでいる。読み進むにつれ、熱々ご飯に納豆をたっぷり乗せて食べたくなること請け合いである。

 大修館書店 1700円

読売新聞
2016年5月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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