長らく絶版状態にあった名著がやっと復刊された。本書はクレーが、当時もっとも先進的なアートスクールだったバウハウスで教鞭(きょうべん)を執っていた時期(1921~31年)の論文や講義草稿などを集成したものだ。
解説で岡田温司氏がその価値について「レオナルドの数々の『手稿』に匹敵する」と書いているように、本書で展開されるクレーの思考は、アートや哲学を志す者に、汲(く)めども尽きせぬインスピレーションを与えることだろう。上下巻で総計1000点を超える図版が理解を助けてくれる。(ちくま学芸文庫・上=1600円+税、下=1500円+税)
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2016年6月5日 掲載
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