『僕の名はアラム』
- 著者
- ウィリアム・サローヤン [著]/柴田 元幸 [訳]
- 出版社
- 新潮社
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784102031063
- 発売日
- 2016/03/29
- 価格
- 572円(税込)
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悪意のない牧歌的な世界を生きる
[レビュアー] 図書新聞
本書は「村上柴田翻訳堂」シリーズの一冊として新たに世に出たサローヤンの傑作短編集である。アルメニア系移民の少年・アラムの目から見るカリフォルニアの共同体の日常は、貧しいながらも冒険に満ちている。白馬を勝手に拝借していとこと乗り回したり、風変わりで世間とズレているおじさんと一緒に砂漠でザクロをつくろうと奔走したり、サーカスが町にやってくるたびに友だちと学校をサボって見にいったりと、アラムは祖国を失ったアルメニア移民のありそうな(ありえなかった?)牧歌的世界の中を生きている。その無時間的な場で繰り広げられる出来事もさることながら、シンプルで短く、時折リフレインする文章も絶妙で、読者の心の隅々まで温かみが沁みわたるだろう。(柴田元幸訳、4・1刊、二七二頁・本体五二〇円・新潮文庫)