総理を見れば一目瞭然? データから読むニッポンの世襲格差

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世襲格差社会

『世襲格差社会』

著者
橘木 俊詔 [著]/参鍋 篤司 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784121023773
発売日
2016/05/19
価格
858円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

総理を見れば一目瞭然? データから読むニッポンの世襲格差

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 引っ越し先とか出張先、職場の近所とか、口コミの得にくい環境で歯医者を探すときは、ネットで調べて「親の代からやってる」「当人が国公立大を出てる」の2条件で絞り込む。

 そう教えてくれたのは、某経済誌の記者。(1)先代からの引き継ぎで開業のコストが小さく、(2)歯学部を出るまでの教育費も私学ほど大きくない、つまりは投資の回収に迫られる可能性が低いから、とかくボラれがちな新顔・飛び込みの患者にとっては不安要因が減るというのが理屈だった。

 経済・経営理論通の彼の歯科医選択術はさてどれだけ当てにしていいのか、それがよくわかるのが、橘木俊詔と参鍋篤司の『世襲格差社会 機会は不平等なのか』。あの『格差社会 何が問題なのか』(岩波新書)でニッポンの格差に世の耳目を集めた労働経済学者が、今回は弟子との共同作業で世襲の実態からプラスマイナスまで、統計ベースで冷徹に示してくれる。

 ワタシの知り合いにもうひとり、政治には無関心ながら、自営業者の社会保障の薄っぺらさに気づいて以来、投票は欠かさなくなったカメラマンがいて、政治的信条も支持政党も予備知識もない彼が選挙広報などチェックしてまず×をつける候補の条件は「世襲」「コネの利きそうな学歴・職歴」、そして「そのあたりの経歴をボカしてる」の3点。

 この候補者消去法の正否もまた、『世襲格差社会』を読めば見えてくるのだけれど、あ、安倍チャン眺めてるだけで一目瞭然か。

新潮社 週刊新潮
2016年6月23日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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