SFやミステリも含めた日本文学の可能性
[レビュアー] 図書新聞
一九七〇年代後半から二〇一〇年代半ばまでの日本文学の歴史を対象に、その意義と可能性を問い直した一冊。特徴は、「純文学」のみならず、文学史からはこぼれ落ちていたSF、ミステリも含めて、すべてをジャンル小説の一つという視点で整理していること。こうしてみると、教科書的な文学史の制度性が明らかになると同時に、佐々木史観の真っ当さ、客観性がよく分かる。この真っ当さを例えて言えば、カーナビの、ずっと交換されていなかった地図情報が(何十年ぶりに?)ようやく更新されたということと等しい。誤解してならないのは、本書は「純文学」を告発するための営為ではなく、むしろ逆に「純」という武装を解除させることでしか見えてこない文学の新たな地平を切り拓くものなのである。(2・20刊、三二四頁・本体八六〇円・講談社現代新書)