【児童書】『ぼくのいちにち どんなおと?』山下洋輔文、むろまいこ絵

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

【児童書】『ぼくのいちにち どんなおと?』山下洋輔文、むろまいこ絵

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

 イヌとネコがけんかをはじめたら、どんなふうに聞こえるでしょう? グルルワンワンとか、フーッニャーゴとかでしょうか。だけど、ジャズピアニストの著者には、こう聞こえる。

 〈にゃごら にゃごら きばがきがき/ほらおん ほらおん ぐわわんわん〉

 本書の魅力は、こうした擬音語の面白さ。主人公の「こうちゃん」が一日を過ごす様子を描いているのだが、オノマトペに独特の字句が当てられる。水は〈ぴちゃらぱしゃらぷるぷるぷる〉と飛び散り、ビールは〈しゃばどびどば〉と注がれる。大きさや太さ、字体も変わったりして、すてきなインプロヴィゼーション(即興演奏)を聴いているような気分だ。

 そういえば子供のころ、英語圏でニワトリの鳴き声を「cock-a-doodle-doo(クックドゥードゥルドゥー)」ということを知ったときは衝撃を受けたっけ。世界の見え方、聞こえ方はみんな違うし、違っているから楽しい。そんな当たり前のことを思い出させてくれる。(福音館書店・1400円+税)

 篠原知存

産経新聞
2016年7月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク