教員と学生の50%を外国人にしてみたら…“混ぜる教育”に注目
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
この6月、イギリスの教育専門誌がアジア各国の大学の最新ランキングを発表した。3年連続でトップだった東京大学は7位に転落し、シンガポール国立大学がトップに立った。京都大学が9位から11位に、東北大学も19位から23位となった。
だが今、世界から注目を集めている日本の私立大学がある。立命館アジア太平洋大学、通称APUだ。開学16年と若い大学でありながら、入学志望者が急増している。
その理由は、新大学構想が固まった95年から目指した「3つの50」に要約される。当初難しいと言われていた「学生の50%を留学生に、出身国を50ヵ国・地域以上に、教員の50%を外国人に」という目標は開学当時にはすでに達成され、現在では約80の国と地域から、留学生が約3000人、国内学生が約3000人在籍している。
世はグローバル化が叫ばれているが国の行政は後手に回る。だが私立ならば、全く新しい視点からの教育が目指せる。そう考えたのは立命館大学の一人の職員と、大分県の前知事であった。世界に発信できる大学を地方に作るという二人の志は一致した。本書は開学から現在までを丁寧に追っていく。
高齢化が心配された大分県別府市も、世界中から若者が集まり、温泉地でバイトとして働いてもらい、日本の良さを知ってもらうなどマイナス面はひとつもない。現在のインバウンドの増加を見込んだような手腕である。
いまや英語ができて当たり前の時代。だが喋れるだけではもはや通用しないのは自明だ。だったら多くの国の人を集め、混ぜてしまおうというコンセプトは見事に実を結んだ。
4年間一緒に過ごした学生たちは日本語も英語も同じくらい上手くなる。問題解決のための討論によって国際社会に出ても意見が言えるのだ。
全てを混ぜ、しかし長所は活かしたこの大学はますます注目を浴びていくことだろう。