『ぶらり昼酒・散歩酒』
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完全に「正しい」酒飲みの姿
[レビュアー] 図書新聞
オビに「美味い一杯にたどりつく。そのための散歩です」とある。この種の「本末転倒」、酒飲みなら誰しも心当たりがあるだろう。大竹さんは鎌倉、立石、北九州、新宿三丁目、調布などをふらふらと散歩し、頃合いを見て(?)飲む。昼から飲む。夜になっても飲む。夜が更けても飲む。たまには朝から飲む。吉田健一が短編「酒宴」に書いている通り、これは完全に「正しい」酒飲みの姿である。本書は雑誌の連載エッセイをもとにしたもので、期間は二〇一二年から二〇一五年にわたる。つまり東日本大震災と福島第一原発の爆発の後だ。書中、大竹さんは夢の中でこう叫ぶ。「原発再稼働ちょっと待ったー!」。これも完全に「正しい」酒飲みの姿だ。なぜなら、爆発する原発などあったら、うかうか酒も飲んでいられないのだから。(6・20刊、三一八頁・本体六八〇円・光文社文庫)