ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)「煌きの青春小説!…とは言えませんが。」【書店員レビュー】

レビュー

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蠕動で渉れ、汚泥の川を

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』

著者
西村 賢太 [著]
出版社
集英社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784087716665
発売日
2016/07/05
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)「煌きの青春小説!…とは言えませんが。」【書店員レビュー】

[レビュアー] ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)(書店員)

セブンティーン。文字にするだけで何とも言えない「キラキラ感」を感じるのは気のせいか。西村作品ではおなじみの主人公、北町貫多。今作では17歳。青春真っ只中・煌めきの青春小説!!…ではなく。相変わらず、そのダメ人間っぷりに苦笑いしてしまいます。そして物語の結末に「嗚呼、やっぱりそうなっちゃいますか…」とさらなる苦笑い。いつもの如く、迷走しつつ破滅への道を突き進み、堕ちていく。でも、どこか笑えて、愛らしさも感じてしまう。 主人公のダメ人間っぷりが他人事とは思えない、自分の中の人間としてのダメな部分と重なって身につまされる、そう感じる方もいるかもしれません。(←このレビュー書いてる私もそうですが。。。)でも、それが不思議と不快ではない、心地良い違和感だったりする。とことん駄目人間なんだけど、憎めない。自分の中にも「プチ貫多」がいるんじゃないか、と感じてしまう。読み終わって気分爽快!とは言えないかもしれませんが、不思議な読後感が残ります。

トーハン e-hon
2016年7月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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