『無実』
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明文堂書店石川松任店「美しき家族愛を描いた、衝撃の《問題作》!」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
妻が脳卒中になり動けなくなった経験と娘の成長を描いた自叙伝『娘から教わったこと』でベストセラー作家の仲間入りを果たしたミステリ作家のジャスパー・ウルリクソンのもとに一通の封筒が届く。児童家庭局から届いたその書類には、ウルリクソンが若かりし頃に関係を持った女性の娘が、ウルリクソンのことを自分の父親だと訴えているという内容が記されていた。娘を名乗り高潔なベストセラー作家に近付く美しい少女クロエの誘惑の影には、彼女の恋人のある思惑があった。
美しい《娘》の誘惑に心を乱されていく妻子を持つウルリクソン、計画のために年齢の離れた恋人をどこか物のように扱うデズ。しかも元教師のデズは十代半ばから終わりにかけての思春期の少女にしか性的な関心を抱けない《エフェボフィリア》という性癖を持っている。設定が設定だけに敬遠している人も多そうです。(たとえフィクションだとしても)生理的に受け付けないという人もいるかもしれません。
ただ同時に、この作品は家族愛を描いたミステリでもあります。歪んだ道を辿ったからこそ、この家族愛がとても美しく感じられるのだと思います。苦難を乗り越えた先にある光景に、思わず心打たれてしまいました。
ちなみに解説によると、アメリカでは賛否両論の上にツイッターの炎上事件が起こった《掛け値なしの問題作》とのこと。分かる気はするけれど・・・・・・、個人的には賛成の側に立ちたいな。愛すべき《問題作》です。