成毛眞が説く『大人はもっと遊びなさい』 その効用は
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
平日は仕事に追われ、休日は疲労回復に努める。そんな生活を送ってはいないだろうか? 休日にやることといったら、ネットサーフィンに、お酒を飲むことぐらい。そんな生活をしているうちに、あっという間に定年になってしまう。定年後は膨大な時間を目の前にして、呆然としてしまうかもしれない。そうならないためにも、退職後も続けられる遊びをいまのうちから見つけたほうがいいと説くのが『大人はもっと遊びなさい』である。
著者は日本マイクロソフトの元社長で、書評サイトHONZの代表である成毛眞だ。本誌では「逆張りの思考」を連載している。第一線で働くビジネスパーソンが、ビジネス書として遊びを推奨する本を出すというのが新しい。
ビジネス書における遊びの本といえば、Francfrancを運営する株式会社バルスの代表、髙島郁夫の『遊ばない社員はいらない』(ダイヤモンド社)がある。この本では仕事と遊びを分けないということを提唱している。また仕事を遊びに変えるというとゲーミフィケーションの本などもある。成毛はそれらとは違い、とにかく大人も子供のように遊べと言っている。
そもそも日本人は遊ぶのが下手だ。どうも遊びを真面目にやってしまうきらいがある。大人は遊びに意味を求め、うまくやろうとしてしまう。しかし成毛は真面目に遊んではいけないと言う。遊びなのだから適当でいい。遊びに優劣はない。“ねばならない”もない。好きに楽しめばいいと言っている。そしてやめたくなったらやめればいいのだ。
なにごとにおいても最初は初心者である。だからとにかくまずは一歩を踏み出せばいいのだ。そうはいっても何をしたらいいのか、わからないという人もいるだろう。そんな人には複数のジャンルの遊びを同時にやることを推奨している。遊びなのだから、いろいろなことを広く浅くやればいいのだ。
遊びはマイペースで成長する喜びを味わえるところがいい。上達の実感は自信につながる。自分にもまだ伸びしろがあるという実感は、仕事にも良い影響を与えることだろう。