『貧困 子供のSOS』 読売新聞社会部著

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貧困 子供のSOS 記者が聞いた、小さな叫び

『貧困 子供のSOS 記者が聞いた、小さな叫び』

著者
読売新聞社会部 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784120048647
発売日
2016/06/22
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『貧困 子供のSOS』 読売新聞社会部著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 読売新聞社会部の記者8名が日本の「子供の貧困」の現場をレポートした1冊だ。特徴的なのは、当事者の子供自身を取材していること。彼・彼女たちを主語とした貧困のリアルな風景を、30代の記者が中心になって切り出す。

 読みながら、これは知っておくべきことだ、という取材者からの強いメッセージを感じた。クリスマスをおにぎり1個で過ごす少女、虐待を受けた少年、祖父母の介護をするヤングケアラー。どこか冷静で大人びた様子から、彼らが過酷な環境によっていかに本来の子供らしさを削り取られてしまったかが窺(うかが)える。多くのケースでそこから見た社会が閉ざされ、未来に希望を抱き難(がた)いことが悲しい。ときに子供自身に重要な選択を迫り、突き放してしまう支援のあり方にも疑問を抱く。

 2年前、「子どもの貧困対策法」が施行されたが、「子供の貧困」は見え難く、問題の大きさに対して支援は弱々しい。だからこそ、様々なデリケートな問題を乗り越え、実態を子供たちの視点で描いた仕事は意義深い。本書を始点にさらなる調査報道を期待したい。

 中央公論新社 1500円

読売新聞
2016年8月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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