『北一輝と萩原朔太郎』芝正身著
[レビュアー] 産経新聞社
『国体論及び純正社会主義』の北一輝と『月に吠える』の萩原朔太郎は、明治以降の「近代日本」に深く突き刺さった「棘(とげ)」のようなものではないかという視点によって書かれた評論である。
北は明治16年、萩原は19年、ともに地方の名望家の長男として生まれ、学歴という意味では落伍(らくご)者となった。著者は2人の著作を丹念に読み解きながら、対照的とも思える2人の思想と行動がともに「近代日本」に対する根源的な異議申し立てであることを明らかにしてゆく。それは昭和39年生まれの著者の現代日本への複雑な思いと重なるものである。(御茶の水書房・3000円+税)