渕書店 BOOKSTORE FUCHI「人生それぞれ。何が悪い?ゴーゴー!!」【書店員レビュー】

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

コンビニ人間

『コンビニ人間』

著者
村田, 沙耶香, 1979-
出版社
文藝春秋
ISBN
9784163906188
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

渕書店 BOOKSTORE FUCHI「人生それぞれ。何が悪い?ゴーゴー!!」【書店員レビュー】

[レビュアー] 渕書店 BOOKSTORE FUCHI(書店員)

幼い頃「合理性」という基準で粗暴な行動を起こすなど問題児であった主人公。カウンセリング等も受けたようだが周囲の人間から「治らない」と心配される。いわゆる障害、とされるが知能にそうしたところは全くない。情緒障害とも違う。「合理性」こそが彼女を動かし自分ではどう他人と違うのか分からない。そこにコンビニという「合理性」の塊のような環境が現れる。その環境の中に入ってマニュアルに従っていれば、まとも、普通、正常であるとなんとなく他人から見られることを知り自分でも納得がいくというわけだ。『ああ、私は今、上手に「人間」ができているんだ(本文)』。そこに新しい価値観を突きつけてくる人間が登場する。「婚活」のためというわけのわからない理由で入ってきた35歳の男。縄文時代に自分の不甲斐なさの言い訳などを求めている屈折したさえない男だがこの男と主人公のやりとりがたまらなくおもしろく読んでいてのけぞる。一体二人で何を言い合っているのだろう?と笑いが止まらない。しかし、彼の「指示」に従うことで主人公の周囲が彼女を「仲間」と見做しだす。二人は同棲する。そして主人公はコンビニ店員に自分らしい人間の原型を求めた生き方の「方法」のようなものをを崩される・・・。

主人公の周囲に対する冷めた温度感は読者を妙に安定させる。清々しくて心地いい。社会学的見地から読めばまた別の読みかたも生まれるのであろうがそんな読み方はしなかった。彼女の生きざまを「障害」とみる見方もあるし、彼女の周囲はそう考えるわけだが-。読み終えた後、主人公が意気揚々と人生を歩んでゆく姿が見えた。何が悪い?ゴー、ゴー!!

トーハン e-hon
2016年9月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク