消えてゆく門付け芸、大道芸への挽歌

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消えてゆく門付け芸、大道芸への挽歌

[レビュアー] 図書新聞

 著者がもの心ついた一九三〇年代、住んでいた村の真ン中を西国街道が貫き、京都から西宮へ出る古い街道、東海道と山陽道を結ぶ脇往還が交差し、まだ牛や馬に引かれた荷車がせわしく往来していた。時を定めてやってくる門付け芸人や時を定めず流れ歩いている大道芸人もやってきた。彼らは乞食の類として蔑まれていたが、笛、太鼓、四つ竹などの鳴り物で賑やかに囃しながらやってきた。そのパフォーマンスに子どもは見とれた。しかし明治の新政府は、このような漂泊の民を取り締り、禁止していった。中世以来の民の芸を支えてきた彼らに、現代の機能万能主義の社会の流れが追い打ちをかけている。本書はその挽歌だというがその二字の裏側に詰まった歴史・文化は重く深い。(8・20刊、二三二頁・本体七四〇円・河出文庫)

図書新聞
2016年9月3日号(3269号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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