『シェイクスピア』
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演劇という芸術形式の奥深さ
[レビュアー] 図書新聞
なぜシェイクスピア劇は何百年ものあいだ我々を魅了し続けるのか? 本書は『ハムレットは太っていた!』などで新たなシェイクスピア研究の道を拓いた河合祥一郎による、コンパクトでありながら充実した入門書である。全体として、シェイクスピアの謎多き人生を時代背景とともに丹念に追跡し、その作品の根底に流れる思想を読み解いている。特に後半以降の作品論では、各作品の喜劇・悲劇を考察し、さらにシェイクスピア劇におけるルネサンス・古代ギリシア哲学の影響まで論じていて、演劇という総合的な芸術形式の奥深さを実感させられる。単なるシェイクスピアに関する教養書にとどまらない、演劇全般並びに人文主義思想、そして「人間」の本質をめぐる議論をも孕んだ好著だ。(6・25刊、二五六頁・本体八二〇円・中公新書)