書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【児童書】『きみは しっている』五味太郎著
[レビュアー] 高橋天地
■手玉に取られて楽しもう
これまで400冊を超える絵本を発表してきた五味太郎さん(71)のロングセラー3冊、『くじらだ!』(昭和53年)、『きみはしっている』(54年)、『ちいさなきしゃ』(57年)が「五味太郎クラシックス」として装いを新たに刊行された。いずれも「古典」ではあるが、いま読んでもすごく斬新だ。
3冊の中でも異彩を放っているのが、読者参加型の『きみはしっている』だ。おっちょこちょいのコンドルが荒野の岩場に翌日分の肉を隠し、読者にこう呼びかける。
〈いいかい!? このほんをいまよんでいるきみ! これはぼくのにくだぞ。あしたまた、たべるぶん。だからだれにもとられないように、ここにこうしてかくしておくというわけさ〉
読者はいきなり目撃者として、作品世界に取り込まれてしまう。翌朝、にくは姿を消し、コンドルは犯人捜しに奔走する。犯人は誰だ? 読者を鮮やかに手玉に取る五味さんの至芸を堪能してほしい。ミステリー好きの大人も楽しめる傑作だ。(岩崎書店・1400円+税)
高橋天地