『京町家・杉本家の 京の普段づかい』
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【聞きたい。】杉本節子さん『京町家 杉本家の京の普段づかい』
[レビュアー] 産経新聞社
■飾らない本物の暮らしぶり
京女の、飾らない本音のつぶやきである。
「和の心といいますか、和の暮らしの文化が廃れつつあるように思います。一方で知ったり学んだりしたいとおっしゃる方も多い。京町家の暮らしぶりとして知っていただけたら…」
京都市内でも有数の京町家に生まれ育った杉本節子さん。料理研究家として活躍し、現在はNHK「きょうの料理」にも出演中だ。祖母から母、娘へと受け継がれてきた日常をつづるが、従来の京都本と違うのは江戸期以来の心得が時々に顔を出すところだろう。
「うちとこ」と呼ぶ杉本家住宅は明治3年築の国の重要文化財。その「おだいどこ(台所)」の思い出は、ゴマをすり、かつお節を削る手伝いからだった。丁寧な暮らしとはこういうことかと、膝を打つ。
京の商家の合理的な食事だった「お茶漬け」、倹約を旨とした普段のおかず「おばんざい」などは本来は質素なもの。だしやしょうゆ、みそなどの調味料は、包丁・ふきんなどの道具は…と、京都人の暮らしが自然体で語られる。
「これほど踏み込んで書いたのは初めて」というのが、ハレとケの日のあれこれ。常の日は始末(倹約)を心がけて普段使いのものを、祇園祭などのハレの日には、特別な調度品や料理が用意された。28日からは、秋の特別一般公開「婚礼衣装展」を開催、祝いの風情を紹介する。
「ハレとケの区別、めりはりにこそ、京都の暮らしがあるように思います」
「はんなり」と表現されることが多いが、むしろ京都の日常は「こうとな暮らしというんが正しい」と笑う。「こうと」とは京ことばで地味で上品、質素な、という意味。漢字で「公道」と書き、かつて幕府が定めた法に従い、慎み深く暮らすべしとした京都人の美徳や矜持(きょうじ)を含む言葉だ。
手土産という意味で使われがちな「おもたせ」の本来の意味や贈り物選びの心得など、知っておきたいエッセンスが詰まっている。(PHP研究所・1500円+税)
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【プロフィル】杉本節子
すぎもと・せつこ 京都市生まれ。料理研究家で奈良屋記念杉本家保存会常務理事。