『やり抜く力-GRIT(グリット)』
- 著者
- アンジェラ・ダックワース [著]/神崎 朗子 [訳]
- 出版社
- ダイヤモンド社
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784478064801
- 発売日
- 2016/09/09
- 価格
- 1,760円(税込)
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大当たり本は翻訳家と編集者で選ぶ!
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
定期的に訪れている書店で、前回紹介したムーギー・キム『最強の働き方』(東洋経済新報社)に代わり、一番目立つところで大展開されていたのが本書である。一目見てこれは売れる!と確信した。著者はペンシルベニア大学の心理学教授で、これが初の著書であるが、翻訳家と編集者がベストセラー『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル著/神崎朗子・訳、大和書房)のコンビなのである。これは間違いないと思って購入したところ、期待を大きく上回るおもしろさだった。
表紙に大きくGRITとあるので、それがタイトルだと思っていたのだが、この本のタイトルは『やり抜く力』。GRITとはやり抜く力のことである。成功するために必要なのは才能ではなく、いかにやり抜くかであるということを説いた本だ。
そもそも「やり抜く力」と「才能」というのは別ものなのだという。偉業を成し遂げた人を見ると、あの人には才能があるからと評価してしまう。そのほうが、才能がない自分は努力したって無理だ、という逃げ道ができて楽だからである。
人は誰しも「才能」に関する偏見を持っている。「成功するためには、才能と努力のどちらがより重要だと思うか?」というアンケートをとると、アメリカでは「才能」と答えた人がおよそ2倍だったという。ある実験では、同じ能力ならば「努力家」よりも「天才」を評価したそうで、みな才能というものを過大評価する傾向にあるのだ。
しかし才能よりも大事なのはやり抜く力なのだと著者はいう。大器晩成という言葉がある。これは一つのことを長くやり続ければ、その道のエキスパートになれるという意味の言葉なのではないだろうか。そしてただ続けるのではなく、日々カイゼンを繰り返すことが大事なのだという。
天才というのは、努力をしなくても偉業を達成できる人のことではない。それは一つのことをやり続け、卓越性を究めることができる人のこと。誰でもやり抜くことさえできれば、そのうち周りから天才と呼ばれるようになるのかもしれない。