あうぅ、おっ、ほおぉ!
[レビュアー] 図書新聞
官能小説の魅力を、文体の歴史や描写の方法など、その内部から浮き彫りにした一冊。本書で取り上げられている官能小説は、単に官能描写のある小説ではない。「読者の性欲を刺激し、オナニーさせる小説であり、さらに重要なのは、人が心の底に持っている淫心をかきたて、燃え上がらせるための小説」である「純官能小説」なのだ。その奥義が生真面目すぎる実直さで分類解析される有り様には、思わず爆笑してしまう。と同時に、さまざまな部位、行為、音をどうやって表現すべきかという試行錯誤の果てに彫琢されてきた日本語表現の無限さを感じずにはいられない。「あうぅ、おっ、ほおぉ!」「ぐ、ぐあああーっ……」「おひっ、おひっ……おひぃーん!」。以上は「悲鳴表現」から。何はともあれすごすぎる。(4・25刊、二一〇頁・本体八四〇円・角川ソフィア文庫)