『世界のお墓』
- 著者
- ネイチャー&サイエンス [著]
- 出版社
- 幻冬舎
- ジャンル
- 芸術・生活/写真・工芸
- ISBN
- 9784344029675
- 発売日
- 2016/07/07
- 価格
- 1,760円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【写真集】『世界のお墓』ネイチャー&サイエンス文・構成
[レビュアー] 産経新聞社
■古今東西の死生観
地域や宗教、歴史的な出来事により、さまざまな形で残る52カ所の美しい墓の写真を集めた。表紙は、チェコにあるセドレツ納骨堂。約4万体分の遺骨が、装飾的に保管されている。中世ヨーロッパでは、頭蓋骨や死に神のモチーフは教会の飾りによく用いられていたという。本物の人骨を装飾的に並べる風習は、日本人にはほとんどなく、シャンデリアや紋章の飾りになった頭蓋骨や大腿(だいたい)骨に何を思えばいいのか戸惑う。
遺骨がなくても心揺さぶられるのが、リトアニアの十字架の丘だ。推定5万本とされる十字架が小さな丘を埋め尽くし、独特の景観をつくる。19世紀にロシア帝国の支配下から独立を求めて戦ったが2度失敗。処刑や流刑にされた人々の遺体が戻らなかったため、遺族が十字架を立てたという。ソ連統治時代には何度もブルドーザーでなぎ倒されたが、すぐに新たな十字架が立てられ、非暴力の抵抗の証しとなった。
一方、現代的な葬送の象徴が、遺灰をロケットで打ち上げる宇宙葬。宗教的な背景がなくても、死して天に昇るという発想が、連綿と続くことに驚く。核家族化が進み、自らの葬送をどうするか、迷う人は多い。死生観を確かめ、“終活”の参考になりそうな写真集だ。(幻冬舎・1600円+税)