『ブラック・ドッグ』
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明文堂書店石川松任店「動物問題に踏み込む、衝撃のパニック・ホラー!」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
動物を含む「最大多数の最大幸福」を追求し、種差別(スピーシズム)の克服を掲げる過激な思想で知られる動物愛護団体〈DOG〉のテロの標的となったのは、動物愛護団体「ウィズ」による動物の譲渡会やよくない噂の絶えないペット流通企業「アヌビス」によるペットの販売会が催されるイベントの会場だった。イベント会場に放たれた謎の獣によって、人々は無慈悲に殺されていく。
幼馴染へのいじめに加担してしまった梶川結愛や「ウィズ」のメンバーである望月栞など、軸となる登場人物は何人かいるのですが、多くの登場人物の視点で物語は進んでいきます。異常な心理状態によって普段では考えられない行動を取ったり、異様な人間関係が形成されたり、と極限状況下の人々を描いた小説ならではの魅力が詰まった作品になっています。
パニック・ホラー、ミステリとしてエンターテイメント性の高い作品(ちょっと荒っぽさを感じたのも事実ですが・・・・・・)ですが、動物という中々触れにくい問題を扱った問題意識の強い作品でもあります。人によっては劇薬になるかもしれないですが、強く印象に残る作品です。