『進化は万能である』
- 著者
- マット・リドレー [著]/大田 直子 [訳]/鍛原 多惠子 [訳]/柴田 裕之 [訳]/吉田 三知世 [訳]
- 出版社
- 早川書房
- ジャンル
- 自然科学/自然科学総記
- ISBN
- 9784152096371
- 発売日
- 2016/09/21
- 価格
- 2,970円(税込)
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生物以外にも適用できる!「一般進化理論」ってなんだ?
[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)
天地創造、生命誕生。宇宙はビッグバンから始まり、その後、偶然に太陽系が形成され、第三惑星・地球に生命が誕生した。そして、我々人類とその他全ての生物は、同じ祖先から枝分かれした。ビッグバンも、進化論も、現代ではごく常識的な科学知識である。大いなる存在がこの世界を創造したわけではない。
西洋思想では、世界は設計されたもの、厳密な計画によって構築されたものだと、説明されてきた。だが科学の「進化」によって、この世界に設計者は存在しないことがわかった。社会もそうだ。人類の歴史を、人類の自由意志でコントロールすることはできない。本書は、「一般進化理論」を主張する。
生物学的進化理論、いわゆるダーウィン説は「特殊進化理論」と呼ぶ。進化するのは生物だけではない。道徳、文化、経済、教育、人口、宗教などの歴史は、全て自ずと展開していく現象、つまり「進化」なのだと本書は訴える。
第8章「心の進化」の主張に従えば、意識的な「意志」、何からも影響を受けることのない「自由意志」は存在しない。自分の人生を自分の意志によって完全にコントロールすることは不可能である。意識は、肉体とは別個に存在しているわけではない。脳という器官が生み出している幻想に過ぎない。意識は肉体そのものである。
さらに言えば、特別なリーダー、指導者、イノベーションをもたらす人材、世界のヒーローを求める人々は多いだろう。びっくりするような革新が起こり、トップダウンでがらりと良い世界、良い政治、良い国に変えられる……という幻想は、私も信じたくなってしまう。しかし、この幻想こそ著者が否定したいもの。因果は逆なのだ。
あらゆるジャンルを「進化」で説明するので、かなり無理があるように思える章もある。これは私がまだ「進化」についていけていないのだと結論づけることもできるのが、面白い。