【児童書】『くじらのくじらん』市川宣子作、村田エミコ絵

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

【児童書】『くじらのくじらん』市川宣子作、村田エミコ絵

[レビュアー] 産経新聞社

 ■ほのぼのと心和む海の中

 7つの海を旅するクジラの「くじらん」が、海の仲間たちと紡ぐ8つの物語からなる幼年童話集。

 海の底に落ちていたバナナをお月さまと思ったくじらんと魚たちが、空に戻そうと奮闘する「くじらんとバナナ」。嵐の日にくじらんの大きな口の中に避難して、嵐が通り過ぎるのを待つ小魚たちと透明なクラゲの子とのふれあいを描く「くじらんとくらげくん」など、海の中で起きる小さな“事件”をほのぼのと解決するくじらんに心が和む。

 ♪ゆうらら ゆらり くらげくん みえないけれど くらげくん とおりぬけは できませーん

 と、魚たちがうたう歌とともに、カモメの「かもんめ」、ヒラメの「ひいらりさん」、トビウオの「ほそながくん」といった海の仲間たちのリズミカルなネーミングも楽しい。

 黒で輪郭をおさえた村田エミコさんの版画が、くじらんの表情と、「いいことができた、いい日でしたね」といったていねいな口調をくっきりと印象深いものにしている。(リーブル・1300円+税)

産経新聞
2016年11月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク