『映画という《物体X》 フィルム・アーカイブの眼で見た映画』
[レビュアー] 産経新聞社
東京国立近代美術館フィルムセンターの主任研究員として、映画関連資料の収集、保存、上映企画などに携わってきた著者が、映画保存の現状や理想など、仕事の周辺に関するさまざまな事柄を縦横無尽につづった。フィルム・アーカイブの重要性と困難さがひしひしと伝わる本になっている。
中でも著者が繰り返し強調するのは、保存は決してノスタルジーではないということだ。過去のことをそのまま現在のことにしてしまう新鮮さにこそ価値があると説き、せっせと保存に心を砕く。この徹底した姿勢には、感謝とともに感動を覚えずにはいられない。(岡田秀則著/立東舎・1800円+税)