『シマエナガちゃん』
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【聞きたい。】小原玲さん 『シマエナガちゃん』
[レビュアー] 産経新聞社
■「雪の妖精」にひと目ぼれ
体長14センチのうち半分が尾であるエナガは、日本でもっとも体が小さい鳥だ。北海道に生息する亜種がシマエナガで、成鳥は体が真っ白に。丸くて、小さくて、まるで雪の妖精だ。
「愛らしさに思わず『シマエナガちゃん』と呼びかけた」と相好を崩す動物写真家の小原玲さん(55)。「シマエナガの写真集は、他にない」と、今年1月から6月まで集中的に撮影して、あっという間に出版した。
10万部近く売れた写真集『アザラシの赤ちゃん』(平成2年)以来、カナダでアザラシを撮り続けてきたが、昨季は暖冬で撮影条件が整わず断念。代わりにタンチョウを撮りに訪れた北海道でシマエナガと出合った。「アザラシの赤ちゃんに匹敵するかわいらしさ」にひと目ぼれした。
写真週刊誌を振り出しに、天安門事件、米国写真通信社の特派員として湾岸戦争などの現場でシャッターを切り続けた。が、「報道写真は、伝えきれない悔しさが常につきまとった」
天安門から戻った2年、アザラシの写真の絵はがきを目にする。心和まされ、誘われるようにアザラシの撮影に出かけていた。
赤ちゃんアザラシにレンズを向けながら、感動を伝えることこそ写真の原点と思い出す。「もう、悲しみを伝えることにおいて他の写真家以上の仕事はできない」。7年に報道写真と決別。以来、動物写真一筋だ。
もっとも、「撮れるはずがないといわれるものを撮ってやる」という気概は被写体にかかわらず不変だ。シマエナガも動きが素早いなど、難しい被写体だが、張り込み取材のノウハウなどを総動員し、珍しい巣立ちの撮影にも成功した。
「愛知にいる家族を養っているのは妻」と笑う。夫人は作家で大学教授の堀田あけみさん(52)。なにしろ今年前半は、ほとんどを北海道で過ごした。「家族の理解で、撮りたいものを撮り続けてこられた」という感謝も込められた写真集だ。(講談社・1300円+税)(石井健)
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【プロフィル】小原玲
おはら・れい 昭和36年、東京都生まれ。動物写真家。写真集に『アザラシの赤ちゃん』『ほたるの伝言』など。