『メビウス1974』
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『メビウス1974』堂場瞬一著
[レビュアー] 産経新聞社
過激派のシンパだった下山英二は40年以上前に東京を捨てた。家族とも連絡を取らず、過去と縁を切って暮らしてきた。ところが一本の電話が彼を東京へ引き戻す。「友だちを助けてくれない?」。ずっと抱いてきたわだかまりを解くことができるかもしれない。旧友のために動き始めた下山は文芸誌に載った伊崎久美子の新連載を目にして凍りつく。若いころの自分が私小説に登場していた。
1974年10月14日。長嶋茂雄の引退試合と三井物産爆破事件が同時に起きたあの日に、時計の針は巻き戻されていく。人生の分岐点をめぐる、苦みの効いた物語。(河出書房新社・1600円+税)