【聞きたい。】高崎順子さん 『フランスはどう少子化を克服したか』

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フランスはどう少子化を克服したか

『フランスはどう少子化を克服したか』

著者
髙崎 順子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784106106897
発売日
2016/10/15
価格
814円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】高崎順子さん 『フランスはどう少子化を克服したか』

[文] 村島有紀


高崎順子さん

 ■女性に二者択一を迫らない

 「保育士は決して親の代わりはしない。子供をしつけたり、愛情を注いだりするのは親の役目で、保育所は中継地点でしかない。子育ての喜びを親から奪わないのがフランス式です」

 フランス在住のライター、高崎順子さん(42)が、同国の子育て支援策を紹介する『フランスはどう少子化を克服したか』を出版した。「日本の少子化対策に役立てば」という思いから執筆したという。

 会社員の仏人男性と結婚し、パリ郊外で7歳と4歳の男児を育てる。同国は過去10年、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の平均数)2・0前後を維持し、少子化対策に成功した国とされる。妻の出産後2週間ある「父親休暇」や無痛分娩(ぶんべん)の普及とともに上昇した出生率、連絡帳や運動会もなく子供のためではなく親のために運営される保育園などを、公的データを駆使して紹介する。

 中でも、注目に値するのは「保育学校」だ。同国では、3歳になれば日本の文部科学省に相当する国家教育省が無償で設置する「保育学校」にほぼ全員が入学する。課題を習得できたかどうかの観点別評価を含めた幼児教育が行われ、放課後は午後6時半までの学童保育が用意されている。

 「出生率が下がり続けた1990年代、政府は、子育てと仕事の二者択一を迫られたら少なくない女性が仕事を選ぶと判断した。それなら仕事をしながら子供を育てられる環境を作ろうと、かじを切った」と高崎さん。

 日本では、保育所に入りたくても入れない待機児童が問題になっている。が、3歳から“学校”が始まると思えば、希望の認可保育所に入れなくても、保育ママや小規模保育所、長期の育児休業などで乗り切れる-と感じるかもしれない。

 「子供は親がどれだけ愛情を注いでも、受け止めてくれるかけがえのない存在。子育てに関係のない男性や、政府自治体の政策立案者にこそ読んでほしい」(新潮新書・740円+税)

 村島有紀

                   ◇

【プロフィル】高崎順子

 たかさき・じゅんこ 昭和49年、東京生まれ。東大卒業後、出版社に勤務。平成12年、渡仏。共著に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』など。

産経新聞
2016年11月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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