『チェンジ・ザ・ネーム』 アンナ・カヴァン著

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チェンジ・ザ・ネーム

『チェンジ・ザ・ネーム』

著者
Kavan, Anna [著]/細美 遥子 [著]/細美 遙子 [訳]/カヴァン アンナ [著]
出版社
文遊社
ISBN
9784892571183
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『チェンジ・ザ・ネーム』 アンナ・カヴァン著

[レビュアー] 長島有里枝(写真家)

 ここまで共感できない女主人公も珍しい。七十五年前に書かれた小説が当時どのように読まれたのか、心配になるほどいけ好かない女なのだ。

 女学生のシーリアは小説家になりたくてオックスフォード大学への進学を望むが、兄の死から立ち直れない母と倹約家の父は彼女に無関心で、それを認めない。両親に愛情を持てないシーリアは人間関係がどこか虚(うつ)ろで、誰であれ最初に求愛する男と結婚しようと決める。夫をインドで亡くし、娘とイギリスに帰る船で彼女は別の男と知り合い、服喪中に結婚し、世間から冷たくされる。二番目の夫の戦死、不倫、育児放棄。シーリアは誰の忠告にも耳を貸さず、世間体は徹底的に気にせず自由奔放に生き、周りの人間を不幸にしていく。

 現代なら、週刊誌で叩(たた)かれそうな生き方をシーリアが選ぶのは、小説を書き続けるためだ。そんな彼女に反発を覚えるが、生活と制作の両立にもがいたりしない強さに嫉妬や憧れも感じる。「名前を変える」こと、すなわち結婚に人生を賭けるほかに術(すべ)がない女性たちの生き方の物語にも思える。細美遥子訳。

 文遊社 2600円

読売新聞
2016年11月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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