初心者からマニアまで 内外の鉄道ミステリーを紹介

レビュー

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  • 鉄道ミステリーの系譜
  • 鉄道ミステリ各駅停車 : 乗り鉄80年書き鉄40年をふりかえる
  • 「清張」を乗る : 昭和30年代の鉄道シーンを探して

書籍情報:版元ドットコム

「鉄道」をキーワードにミステリーを読み解く

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 鉄道ミステリーとは鉄道を舞台にした、もしくは鉄道を主題にした推理小説の総称だ。原口隆行鉄道ミステリーの系譜』にも登場する松本清張『点と線』、西村京太郎『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』などが思い浮かぶ。

 海外物ではコナン・ドイル『消えた臨急』、本職が鉄道土木技師だったF・W・クロフツ『死の鉄路』、アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』などを著者は挙げている。

 しかし本書の功績は、一般的には知られていない逸品を発掘していることにある。大正期の甲賀三郎『急行十三時間』。戦前では浜尾四郎『途上の犯人』、海野十三『省線電車の射撃手』、大阪圭吉『とむらい機関車』。戦後の芝山倉平『電気機関車殺人事件』、土屋隆夫『夜行列車』などだ。周到に書かれた梗概に刺激され、読んでみたくなる作品が並んでいる。

 優れた鉄道ミステリーは、作品が書かれた当時の駅や列車に関してはもちろん、世相や風俗、社会情勢をも反映させている。探偵小説から推理小説へと至る過程を踏まえた上で、内外の鉄道ミステリーを紹介していく本書は、初心者からマニアまでの興味に応える心強いガイドブックだ。

 なお、このジャンルについては同社新書シリーズの中に、辻真先鉄道ミステリ各駅停車―乗り鉄80年 書き鉄40年をふりかえる』がある。また松本清張作品にスポットを当てた、岡村直樹「清張」を乗る―昭和30年代の鉄道シーンを探して』もお薦めだ。

新潮社 週刊新潮
2016年12月1日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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