『未来政府-プラットフォーム民主主義』 ギャビン・ニューサム著

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未来政府

『未来政府』

著者
ギャビン・ニューサム [著]/稲継 裕昭 [訳、監修]/町田 敦夫 [訳]/リサ・ディッキー [著]
出版社
東洋経済新報社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784492212288
発売日
2016/09/30
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『未来政府-プラットフォーム民主主義』 ギャビン・ニューサム著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

真の市民参加の政治へ

 政府への書類手続きや役所の窓口での申請を、もう少し簡単に効率的にできないものか。そう感じた経験は多くの人がもっているだろう。その一方で、スマホの登場等によって、我々の身近な生活はかなり便利になっている。何か調べたり申し込んだりするのも、スマホで簡単にできる。技術革新のおかげだ。

 この民間で起きている大きな技術革新の成果を、もっと政府の活動にも生かせないものか。そして、それをさらに推し進めていった場合、政府はどうなるのか、どうあるべきなのか。このチャレンジングだが興味深い課題に挑んでいるのが、本書だ。

 しかし、決して理想論や空想論が語られるのではない。著者は、サンフランシスコ市長を経験し、現在カリフォルニア州副知事である現役の政治家だ。ここで語られているのは、実際の政策現場で起きている革新であり、その裏側にある変化に対する抵抗や、考えるべき課題だ。

 技術革新が可能にするのは、単なる手続きの利便性向上だけではない。今まで当たり前のように政府が担ってきたサービスを、民間がより便利に行えるようになり、市民がもっと積極的に行政や政治に関与できるようになる。つまり真の意味での市民参加の政治が可能になるというのが、本書の重要なメッセージだ。

 そのためには克服しなければならない課題が少なくないことも事実だが、それらについても、比較的きちんとした検討がなされている。政府の情報を積極的に公開していく際のプライバシーの問題についても、反論も含めた慎重な議論がなされている。

 カリフォルニア州が既に理想的な政府になったというわけでは、もちろんない。しかし、政府は民間活動の基盤となるプラットフォームになるべきという主張等、本書のメッセージは政府関係者だけでなく多くの人にとって示唆に富むものだろう。稲継裕昭監訳。

 ◇Gavin Newsom=1967年生まれ。起業家から2003年、36歳の若さでサンフランシスコ市長に当選した。

 東洋経済新報社 2400円

読売新聞
2016年11月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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