『世界とつながるハプスブルク帝国』 大井知範著

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世界とつながるハプスブルク帝国

『世界とつながるハプスブルク帝国』

著者
大井 知範 [著]
出版社
彩流社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784779122651
発売日
2016/10/14
価格
3,996円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『世界とつながるハプスブルク帝国』 大井知範著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 19世紀の帝国主義全盛期に、列強の一角を占めたハプスブルク帝国ことオーストリア。中東欧に広大な領土を有したため、陸軍大国というイメージが強いが、実は海洋国家としての一面も持っていた。このことを、同国が行った世界遠征事業を通して明らかにしたのが本書である。

 ハプスブルク帝国は、1857年に軍艦ノヴァラ号を遠征させ、ドイツ連邦内で初めてとなる世界一周航海を成功させた。これは、科学的探求心や海軍、貿易の発展への強い意欲の表れであった。以後ヨーロッパ域外への遠征を繰り返し、19世紀後半になると、東アジアにも軍艦を常駐させるようになる。義和団事件後に他の列強と共同出兵を行い、第一次世界大戦に際してドイツとともに日本と交戦するなど、同国はしばしば東アジア国際政治上にアクターとして登場する。本書の分析によって、その背景がよく分かる。

 著者は、同国は植民地を持たなかったが、その海外遠征事業は、いわば「植民地なき植民地主義」によって支えられていたと指摘する。西洋諸国と非西洋の関係性を問い直す上で、有益な視点である。

 彩流社 3700円

読売新聞
2016年11月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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