あちこちの出版社に書いたものの、本にならずに宙に浮いていた短編を1冊にまとめた拾遺集。なので、味わいはさまざまだ。
たとえば冒頭の「おれは社長だ!」はお仕事小説。準大手の広告代理店を辞めて独立し、厳しい現実に向き合う男の日々を描く。軽妙な筆致でするっと主人公の視点に没入させてくれる。別の1本はまた違って社会派のテイストで、著者唯一だというショートショートは読後に苦みが回り、家族ものはほっこりと…。どこからどれを読んでもいい。空き時間にさらっと読める。困ってしまうのは全部続きが読みたくなること。(講談社・1200円+税)
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2016年12月4日 掲載
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