とにかくローンチしてみろ! 「7日間起業」という考え方

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7日間起業

『7日間起業』

著者
ダン・ノリス [著]/平野 敦士カール [訳]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784023315457
発売日
2016/11/18
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

とにかくローンチしてみろ! 「7日間起業」という考え方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

7日間起業――ゼロから最小リスク・最速で成功する方法』(ダン・ノリス著、平野敦士カール訳、朝日新聞出版)の著者は、4年間にわたりさまざまな事業で失敗したのち、わずか1週間で”億万長者”ビジネスを見つけたという人物。つまりここでは、自身の失敗に基づくフレームワークが明かされているわけです。

ところで本書が日本国内で発刊されたのは、原本の完成度の高さに心を打たれた翻訳者が、著者にコンタクトしたからなのだそうです。なにが訳者を魅了したかといえば、「起業家になりたい」と思っているにもかかわらず「絶対実行しない人」に対し、「ローンチしてから顧客に聞け! ともかくやっちゃえ!」とシンプルなメッセージを投げかけているところだとか。

本書が秀逸なのは、筆者が実際にどのように起業したのか、どんな点にフォーカスするべきなのか、そして何をするべきではないのかについて、自身の失敗に基づいて明確に示している点だ。(「訳者まえがき」より)

しかし、なぜ7日間で起業する必要があるのでしょうか? その考え方を開設した第4章「なぜ7日間で」のなかから、印象的な考え方を引き出してみましょう。

7日間は短い

アントレプレナー(筆者注:起業家)になりたいのなら、ローンチしなければならない。本書のアイデアに従うなら、今から1週間後には、あなたはアントレプレナーになっているだろう。(56ページより)

しかし実際のところ、わずか7日でどれほどのことが達成できるのでしょうか? その問いについて著者は、「全体プランのすべてを具現化することは不可能かもしれないが、なにかしらをローンチすることができる」と主張しています。

ローンチできたとすれば、お金を支払ってくれる顧客と対話を開始することが可能になります。そうすれば、憶測抜きで、ビジネス上の繊細な判断ができるようになるでしょう。素早いローンチのためには、そのような「多くの妥協」が必要だということ、それを肝に命じておくことが大切だというのです。

7日間でローンチにこぎつけようと決めたなら、実際になにをローンチするかについての考えが変わるだろうとも著者はいいます。

・あなたのビジネスは、アマチュアのサービス、あるいはコンサルタントだろうか? それなら、今すぐ誰かに電話して、彼らに助言し、支払いを要求してみればよい。
・プラグインやアプリをローンチしたい? そのプラグインやアプリがなくても手作業でできること――少なくとも短期間なら――は何か? その機能なら省略してローンチできる? 実際の顧客と対話を始め、その結果に基づいて次の一歩を検討しよう。
・オンライン講座や会員制度を立ち上げたい? それなら7日間でローンチ可能なテクノロジーがある。壮大なローンチ計画は、後に実際の顧客の行動に基づいた判断が可能になる時まで保留しよう。
・実際の(物理的な)プロダクトを製作したい? まずは他の誰かのプロダクトを売り、推測に基づいて行動するより、そのフィードバックを得るのはどうか?(57ページより)

これらの分野でビジネスを開始する人は、「結局そのビジネスがいいアイデアではない」という結論に達するためだけに、プランニングとエクスキューションに数カ月あるいは数年を費やすことになるそう。

しかし7日間起業に必要なのは、発想の転換。たとえば上記のようなアプリ開発などの分野は、チームを組み、ローンチまでに6カ月かけてプロダクトを開発するものです。ところが、それがヒットしなかった場合、さまざまなことを方向転換する必要にかられることになります。そこが、7日間起業との差。

7日間起業の精神とは、7日間でローンチすることである。人々が求めているかどうか定かではないものをつくるのに費やす時間はない。7日間でやると決めたら、あらゆる推測を問い直し、実現する方法をみつけるのだ。(59ページより)

一般的な感覚からすると、どう考えても7日では無理だという気がします。しかし、もし本当に無理なら、それはなにかが間違っているからなのだと著者は指摘しています。

なすべきことは、リスクを最小化し、推測に基づく作業に費やす時間を最小化すること。テスト期間に6カ月を必要とするアイデアなら、なにか別のアイデアに乗り換えるべきだという考え方です。

ローンチまでの7タスク

「本書はよくあるタイプのビジネス書とは違う」、と著者は念を押します。「理想的なマーケットを見つけよう」「あなたのユニークな売り(USP=ユニーク・セリング・プロダクション)を見つけよう」「エレベーターピッチ(提案)のススメ」といった話を期待しないでほしいというのです。なぜならそれらは推測に基づく話であり、ローンチ前には無意味なものだから。そこまで言い切るのです。

そして、それを踏まえ、次いでローンチまでの7日間で実際に行うべきことを概説しています。

1日目
アイデアを決定する。いくつかのアイデアを出し、その中からいいアイデアと悪いアイデアを(実際の顧客がまだいない状況で可能な限りにおいて)より分ける。

2日目
7日後にローンチするものを決定する。ここでMVP(実用最小限の製品)という概念を説明し、なにをローンチするべきかの検討を開始。

3日目
ビジネスの名称を決定する。それは実際にはたいした問題ではないものの、シンプルで有益な名称決定は重要でもあるそうです。

4日目
ランディングページか、なんらかのオンライン上のプレゼンスをつくる。

5日目
ビジネスを十分な数の人々の前に提示し、ビジネスを継続するか否かを決定。

6日目
ローンチを目的として進んできた次の段階として、自分自身にとって成功とはなんなのかを定義。

7日目
ローンチしなければならない。

上記が、「7日間起業」のおおまかな流れ。以後の章ではそれぞれについて、詳細な解説が加わることになります。(57ページより)

実際の「7日間起業」の方法はもちろんのこと、「ローンチする意味」「スタートアップについての解釈」「7日間で実行する理由」など、これらの前提としてある考え方もきわめて重要。つまり全編を通して、強い説得力が本書を貫いているわけです。起業を意識している人なら、ぜひとも読んでみるべき1冊だといえるでしょう。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2016年12月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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