『数学的な宇宙』 マックス・テグマーク著

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数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて

『数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて』

著者
マックス・テグマーク [著]/谷本 真幸 [訳]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/物理学
ISBN
9784062169622
発売日
2016/09/21
価格
3,780円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『数学的な宇宙』 マックス・テグマーク著

[レビュアー] 柴田文隆(読売新聞社編集委員)

生命は無限の条件から

 宇宙に存在する物質の95%は目に見えず正体不明。ビッグバンは始まりではなく、インフレーションという急激な膨張が終わったことを意味する。「空間」や「もの」は次元や曲率、電荷やスピンといった数学的性質しか持たず、その意味で純粋に数学的な対象物だ――。

 こんな刺激的な宇宙論が480ページも続く。「この辺で読者は、ちょっと不安になってきたのでは」「正気の沙汰とは思えないだろう」と著者が心配してくれるのは151ページ目。もう遅い。脳は沸騰しそう。

 ところがメインディッシュはここから。並行宇宙への分裂は絶え間なく起きており、「私たちの宇宙」は4レベルある多宇宙の階層の中の一つに過ぎないと言う。インフレーションは「宇宙を一つ作ってハイ終わりではなく、多様な並行宇宙からなる膨大な集団を作った」ようなのだ。この考え方は、別の大きな謎をも説明してくれる。私たちの宇宙が、生命が存在できるよう、まるで特別に微調整されているように見えるのはなぜか、という謎だ。

 私たちの宇宙は、不気味なほど精密に、生命に適した条件がそろっていることがわかっている。太陽の質量やニュートリノ質量、暗黒エネルギーの値などがちょっとでも違っていたら、私たちのような生命は存在できなかった。単なる偶然にしては出来過ぎ。神様がツマミを合わせてくれたはずもない。

 インフレーションで作られる並行宇宙はほとんどが死んだ宇宙だが、無限に存在するのなら、その中に、生命を宿す条件をピタリと満たす並行宇宙もあると考えて良い。ならば、私たちが<そのような宇宙に自分たちを発見した>としても、なんら驚くにはあたらない、わけだ。

 最終章で著者は訴える。私たちの宇宙で、人類ほど進んだ知的生命体はいないかもしれない。生命を脅かすリスク(偶発的核戦争、非友好的人工知能など)にもっと関心を持つべきだ、と。谷本真幸訳。

 ◇Max Tegmark=宇宙論研究者。マサチューセッツ工科大学(MIT)物理学教授。

 講談社 3500円

読売新聞
2016年12月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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