『戦国と宗教』 神田千里著

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戦国と宗教 (岩波新書 新赤版)

『戦国と宗教 (岩波新書 新赤版)』

著者
神田千里 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004316190
発売日
2016/09/21
価格
886円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『戦国と宗教』 神田千里著

[レビュアー] 月本昭男(旧約聖書学者・上智大特任教授)

 大名たちが合従連衡を繰り返し、権謀術数が渦巻いた戦国時代は、神仏を深く信仰した時代でもあった。彼らは神仏に戦勝を祈願し、加持祈祷(きとう)を行い、鬮(くじ)を引き、呪物を掲げて戦った。だが、最後は道義が神仏を動かすと信じ、己の義と敵方の不義を神仏に訴えて、結果を「天道(てんとう)」に委ねた。著者はそこに神仏を包摂する天道信仰を洞察する。

 この時代の宗教運動といえば、一向一揆とキリシタン大名の登場である。著者によれば、権力に対する民衆の抵抗運動と説明されてきた一向一揆は、真宗内部の宗派対立が大名間の抗争と協同した結果であったし、新しい宗教に神仏以上の力を感じ取ったキリシタン大名は、その宗教心性において、他の大名たちと何ら変わるところはなかった。彼らも十字架という呪物を掲げて戦った。秀吉の「伴天連(ばてれん)追放令」も、キリスト教を排撃するためというよりは、キリスト教が自らを天道の下におこうとせず、社寺の破壊をもくろんだからであった。

 天道信仰を通奏低音としつつ、戦国時代と宗教との関わりを史料に探り、歴史の妙味を味わわせてくれる好著。(岩波新書、820円)

読売新聞
2016年12月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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