「悪文」を書かないために…37年前に発売された名著

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  • 悪文 : 伝わる文章の作法
  • 20歳 (にじゅっさい) の自分に受けさせたい文章講義
  • 文章力の基本 : 簡単だけど、だれも教えてくれない77のテクニック
  • 悪文
  • 夜と霧

書籍情報:openBD

ビジネスマン必携のロングセラーが文庫に!

[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)

20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀史健、星海社新書)や『文章力の基本』(阿部紘久、日本実業出版社)のように、文章術の本には定番書と呼ばれているものがいくつかある。そのような定番書の中に、私が生まれるよりも前に発売され、いまなお読み継がれている名著がある。タイトルを『第三版 悪文』(岩淵悦太郎編著、日本評論社)という。その本がこのたび文庫になった。

『悪文』の初版が発売されたのは一九六〇年、現行の第三版が発売されたのは一九七九年である。それから二十五刷と版を重ねている超ロングセラーだ。古典や名著を紹介するフェアでは『夜と霧 新版』(ヴィクトール・E・フランクル著、池田香代子訳、みすず書房)とともに、必ずといっていいほど展開される本である。書店では文章術か、法律文書の棚に並べられていることが多い。私が働いていた書店では常時、法律文書の棚に平積みされていた。

 悪文というタイトルが示す通り、この本では悪文とはどういうものかを紹介している。著者がいう悪文とは読者にとってわかりづらい文章のことである。例えば、長すぎる文や、誤解される表現を含む文、堅すぎる文章、段落わけのされていない文章などがそうだ。この本では新聞の記事や広告の文章などを例にとり、なぜその文がよくないのか、またどう直したら読みやすくなるのかを丁寧に解説している。

 長すぎる文は確かに読みづらい。でも読点ばかりで、句点がない、一文で数百文字もあるような文を誰もが書きがちである。そういう人には、この本に書かれている文の区切り方や、接続詞の有効な使い方はとても参考になるだろう。また述語のない文や、主語と述語がつながっていない文も、意識をしていないとけっこうよく書いてしまうので注意が必要だ。

 三十七年前に発売された本なので例文はどれも古い。しかし内容はまったく古びておらず、とてもわかりやすいので、ぜひとも一読してほしい本である。巻末にある悪文をさけるための五十か条を意識するだけでも、わかりやすく、相手に伝わる文章が書けるようになるはずだ。

新潮社 週刊新潮
2016年12月15日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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