子どもを全力で守るために【自著を語る】

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告発 児童相談所が子供を殺す

『告発 児童相談所が子供を殺す』

著者
山脇 由貴子 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166610907
発売日
2016/09/21
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

子どもを全力で守るために【自著を語る】

[レビュアー] 山脇由貴子

 児童相談所を辞め、自分のオフィスを開業し、昔担当していた、お母さんや子どもが来てくれるようになった。

 三十二歳の息子のことで悩んでいるお母さんは、私が独立しているのを知り、「運命だと思った」と言ってくれた。児童相談所だと、担当できる地域が決まっている。そして、相談を受けられるのは十八歳未満まで。もう何年も悩み続けていたお母さんは、相談出来る場所を、人を見つけられずにいたのだ。私が、児童相談所で彼女の息子の相談を受けた時、息子は中学生だった。親子の問題の解決には、長い時間がかかるのだ。今では悩みはすっかり解消され、お母さんはとても明るくなった。その姿に、今は私が癒されている。

 私が高校生の時に担当していた男の子は、自分は大丈夫だけれど、奥さんの相談に乗って欲しい、と連絡して来た。

「俺は、山脇さんに助けてもらったと思ってるんで」

 と言ってくれた時は、嬉しくて涙が出そうになった。そして奥さんも虐待を受けた経験があり児童相談所が関わっていたにも関わらず、心の傷が癒えないまま、抱え続けていた。

 困った時、苦しい時に頼る人を選ぶ力は生きていく上で重要だ。私のところに来てくれたことは、本当に嬉しく思っている。高校生だった時に私の心理検査を受け、その結果を聞いた旦那さんは、自分の心の状態と家族の問題をあまりに的確に指摘されたことに大きな衝撃を受け、いまだに鮮明に覚えていた。その理解があったからこそ、自分は回復出来た、と思ってくれていた。だからこそ、奥さんにも検査を受けさせたいと思ってくれたそうだ。検査の結果を聞いた奥さんは、

「心理検査の結果って、教えてもらえるんだね」

 と、喜んでくれた。彼女は児童相談所から心理検査の結果を知らされていなかったのだ。

 児童相談所で働いている時も、二十歳を過ぎて自立し、「懐かしくて」と会いに来てくれる子がいた。

 序章で触れた、施設を飛び出し、風俗に入ってしまった女の子だった。施設を飛び出した彼女を、再び家から離すために、私はお母さんの虐待を厳しく指摘し続けた。その結果、お母さんと私は完全に敵対し、児童相談所に不信を抱いていた彼女とも敵対して終わってしまっていた。彼女がその後、家を飛び出し、風俗の世界に飛び込んでいたことを、私はその時、彼女の口から初めて知らされた。

文藝春秋 本の話WEB
2016年12月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

文藝春秋

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