自分の「レジリエンス」=逆境力のレベルをチェックしてみよう

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逆境力の秘密50

『逆境力の秘密50』

著者
ジョン・リーズ [著]/関根光宏 [訳]
出版社
CCCメディアハウス
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784484161129
発売日
2016/10/14
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

自分の「レジリエンス」=逆境力のレベルをチェックしてみよう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

きょうご紹介したいのは、『何があっても打たれ強い自分をつくる 逆境力の秘密50』(ジョン・リーズ著、関根光宏訳、CCCメディアハウス)。その冒頭には、こう書かれています。

大きな重圧がのしかかったとき、ある人は挫折し、ある人はうまく対処し、ある人は上手に切り抜けるだけでなく力強く成長する。これがレジリエンスだ。レジリエンスの原動力は何か、レジリエンスがかけている人がいるのはなぜか、レジリエンスは強化できるのか。私たちはそれを知りたい。(「はじめに」より)

「レジリエンス」とは、もともと物質の性質を表す物理学の用語。物質に力を加えて曲げたり、圧力や負荷をかけたりしたとき、その物質が元の形に戻る速度を左右する力、要するに「外力による歪みを跳ね返す力」です。そして、人におけるレジリエンスとは、立ち直る能力を意味するのだと著者はいいます。ビジネスでいえば、危機的な局面に陥ったのち、通常業務を再開する能力。いわば、人生の道のりの紆余曲折に対応する能力だということです。

注目すべきは、著者が「レジリエンスは、習得し、開発し、強化することが可能」だと断言している点。つまりはそのために、本書は書かれているわけです。

レジリエンスのレベルをチェックする

自分の性格を丸ごと変えてしまうことはできないけれど、自分自身をよく理解し、行動を改めることなら可能。自分が生まれつきどういう人間なのかを理解できるようになると、「なぜうまくいかない人間関係があるのか」「なぜ自分がのびのびと仕事できる環境があるのか」がわかるようになるのだと著者はいいます。

次に大切なのは、行動を変化させていくこと。たとえば、自分が仕事をいちばんよく覚えられるのは、明確な指示をもらったときだとわかったのなら、上手に指示を仰ぐ方法を身につければいいわけです。

そこで著者は、まず自分の現在の状態をチェックすることを勧めています。方法は簡単で、以下の質問に5段階評価で点数をつけるだけ。どの程度当てはまるのかがわからないときは、できるだけ高い点数をつけてクエスチョンマークを付記しておけばいいそうです。そして、目下の自分にとって非常に重要だと思った項目にチェックを、ぜひとも必要だと思った項目には二重チェックを入れること。

現在の個人的レジリエンスのチェック
(よく当てはまる=5~、どちらとも言えない=3~、まったく当てはまらない=1)

・人生を形づくる重要な出来事に対して、自分が主導権を握れていると思うか?
・自分自身の能力と強みを信じられるか?
・前向きな変化を起こすために人の協力を得られると思うか?
・将来の重要な局面において、自分が主導権を握ることができると思うか?
・新しいスキルや知識の習得能力に自信があるか?
・あなたは通常、楽観的か?
・困難な状況にあるときも楽観的でいられるか?
・物事がうまくいかなくなりはじめたとき、他人を責めずにいられるか?
・物事がうまくいかなくなりはじめたとき、すぐに自分を責めずにいられるか?
・出来事に対して感情的にならず、事実に目を向けることができるか?
・出来事に対して感情的に反応するほうだと思うか?
・自分の感情が周囲にどのような影響を及ぼすかを自覚できているか?
・たいていの場合、自分は自尊心が強いと思うか?
・自分がどういう感情を抱いているか、何がその感情を引き起こしたのかをしっかり認識できるか?
・これまでの人生で起きた出来事によって自分が成長したと思うか?
・ストレスに悩まされているときも、ユーモアを失わずにいられるか?
・過度のプレッシャーを感じるとき、冷静さを保っていられるか?
・難しい決断を下すのが得意だと思うか?
・繰り返し起こる問題に直面したとき、自分の行動を苦労せず改めることができるか?
・悩みや不安をうまく抑えることができるか?
・物事がうまくいかないときも、あきらめずに仕事をやり遂げる能力が高いと思うか?
・健康的な生活習慣を維持することができているか?
・砂糖、カフェイン、アルコールなどの嗜好品を適度な量に抑えられているか?
・十分な休息と睡眠を取れているか?
(19ページより)

現在の仕事上のレジリエンスのチェック
(よく当てはまる=5~、どちらとも言えない=3~、まったく当てはまらない=1)

・自分の仕事は意味のある目的に満ちたものだと思うか?
・自分は思い描いたとおりに職歴を積み重ねることができていると思うか?
・「自分のキャリアは自分で主導権を握ることができる」という言葉に強く同意できるか?
・自分の貢献は成果をもたらしていると思うか?
・仕事全般から学びつづけることができていると思うか?
・仕事で自分の価値を認められていると思うか?
・自分の意欲をうまくかき立てることができるか?
・プレッシャーを感じる状況のもとで問題をうまく解決できると思うか?
・度重なる変化にうまく対応できるか?
・ゲームのルールが急に変わったとき、適応することができるか?
・今の自分の仕事に対して十分な訓練を受け、かなりのスキルを身につけたと思うか?
・同僚に好感を持っているか?
・現在の職務から学びつづけることができていると思うか?
・キャリアの最終目標を達成できる能力に自信があるか?
・安心して仕事ができているか?
・自分の将来に関して決定権をもつ上司と、強固な関係を築くことができているか?
・仕事で裁量を与えられているか?(さまざまな決断や、いつどのように作業を行うかを自分でコントロールできていると感じているか?)
・対立にうまく対処できるか?
・自分を否定されたり個人的な批判にさらされたりしても、臆することなく仕事に取り組むことができるか?
・自分の感情は仕事の成績に影響を及ぼすと思うか?
・心から信頼できる人と強固な関係を築くことができているか?
・メンターに支えてもらっているか?
・同僚にどれくらい励まされていると思うか?
・1日の仕事が終わったあと、すぐに頭を切り替えて休むことができるか?
(21ページより)

レジリエンスを形成する人間関係のチェック
(よく当てはまる=5~、どちらとも言えない=3~、まったく当てはまらない=1)

・日々の生活のなかで困ったことに対応するとき、周囲の人に頼るほうか?
・周囲の人とは、友情も含めて、個人的に強く親密な関係を築くことができているか?
・「私の周囲には、私を非難せずに話を聞いてくれ、無条件で支えてくれる人たちがいる」という言葉に強く同意できるか?
・「私は同僚を信頼している」という言葉に強く同意できるか?
・「私は同僚に信頼されている」という言葉に強く同意できるか?
・強く感じたことを気兼ねなく話すことができるか?
・失望したとき、気兼ねなく正直にそう言うことができるか?
・信頼できる人と強固な関係を築くことができていて、その人たちには感じたことをありのままに話せるか?
・周囲の人が自分の意見に耳を傾けてくれ、価値を認めてくれていると思うか?
・ごまかしや追従に屈しないでいることができるか?
・常に褒めてもらわなければ、心を奮い立たせることができないほうか?
・ミスなくやり遂げられない仕事を上手に断ることができるか?
・自分を否定されたとき、うまく対処できるか?
・自分のやり方についてフィードバックをほとんど受けられないチームのなかでは、仕事がしやすいと思うか?
・弱気になったときや孤立したと感じたとき、気兼ねせずにそう言えるか?
・周囲の人から感情面でどのくらい支えてもらっていると思うか?
・居住地のコミュニティとは強い結びつきがあると思うか?
・ほかの人とかかわりあう必要があるスポーツや趣味に積極的に参加しているか?
・仕事以外の活動の場、たとえばチャリティや信仰心に基づく共同体で、あなた個人の価値を示すことができているか?
(22ページより)

このチェックリストでは、合計点を出す必要はないそうです。そして点数はじっくりと考えたうえで、まったく主観的につけても構わないのだとか。大事なのは、自分自身がこのチェックリストを利用して、周囲の人とどのくらい話し合うことができるかだというのです。友人やコーチを話し合えば、レジリエンスに課題がある領域、将来課題が発生しそうな領域について重要な意見をもらえるはずだから。

点数が1か2だった項目は、レジリエンスが危険にさらされている領域、弱い領域なのだといいます。大きなストレスにさらされる環境や、フィードバックを受けられない環境にいるのではないかということ。なお点数が3だった項目にも注意は必要ですが、それほど急ぐ必要はないそうです。

点数が4~5だった項目は、現在のところレジリエンスが維持されていると思われる領域。それは生まれつきの性格のおかげかもしれないし、経験や環境のおかげかもしれないけれど、この領域でのレジリエンスの強さを当然だと思ってはいけないと著者はアドバイスしています。必要に応じて守り、さらに強化していくことが大切だというわけです。

以後の章では、上記の結果の改善を図るためのさまざまなヒントが提示されます。つまり心をフラットな状態にして受け止めれば、相応の効果が望めるかもしれないということ。多くの場面に対応する逆境力を身につけるため、ぜひとも読んでおきたいところです。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2016年12月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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