<東北の本棚>攻めの可能性見据える

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

<東北の本棚>攻めの可能性見据える

[レビュアー] 河北新報

 高齢化した零細農家が今後5年以内に大量離農し、水田農業の合理化が一気に進む。生産性の高い農家がさらに規模拡大を進め、グローバルな視点で世界のコメ需給に応えていく-。
 タイトルは農業ジャーナリストの著者が逆説的に説くのではない。新時代に先駆け、多彩なコメ商品を展開する団体、企業の取り組みを目の当たりにし、日本のコメが世界に打って出る可能性にエールを送る。
 産学連携で酒造り用の低コスト米を開発し、純米酒の消費拡大を図る秋田銘醸(湯沢市)。和食ブームで日本料理店がアジアでも増える中、コメを現地精米して売り込む新潟の業者。エスニック料理向けの長粒米に着目し、世界規模で増産を図る農事組合法人など、「攻めの農業」を実践する取り組みを伝える。
 長年、米価と農家を支えてきた減反(生産調整)については「農業の自立を阻み、弱体化させてきた元凶」と容赦ない。秋田県大潟村で異を唱え、自主作付けしてきた黒瀬正氏らへのインタビューも盛り込んだ。減反廃止政策を歓迎する一方、国が進める飼料用米増産については「消費者を無視した補助金漬け農政の再来では」と危惧する。
 著者は1978年福岡県生まれ。日本農業新聞社を経てフリーで執筆活動に。
 イカロス出版03(3267)2719=1620円。

河北新報
2016年11月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク