<東北の本棚>幸村の遺志継ぎ東北へ

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仙台真田氏物語

『仙台真田氏物語』

著者
堀米薫 [著]/大矢正和 [イラスト]
出版社
くもん出版
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784774325248
発売日
2016/10/05
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>幸村の遺志継ぎ東北へ

[レビュアー] 河北新報

 戦国武将真田信繁(幸村)の娘、阿梅(おうめ)。仙台藩祖伊達政宗の重臣で白石城主の片倉小十郎重綱(後に重長と改名)の後妻となり、白石の地に眠る。本書は、悲運を乗り越え父幸村の命脈を保たとうとした女性、阿梅に焦点を当てた児童向け歴史小説。角田市在住の児童文学作家が、文献を基にしながら歴史のあやに思いを寄せて描ききった。
 小学5、6年以上対象だが、底流に流れる親子の愛や人の情けをつづる物語は、大人も十分楽しめる。
 1615年、大坂夏の陣-。大坂城陥落が迫る中、豊臣方の幸村は秘策を打つ。敵の徳川方で参戦した重綱の下へ逃れよと阿梅に命じたのだ。阿梅は弟妹たちを連れて難を逃れた。将来の真田家復興を夢見ながら。
 保護された阿梅たちは弟妹とともに白石で暮らす。なおも豊臣勢を根絶やしにしようとする徳川方を恐れた政宗と重綱は、阿梅の弟に「片倉」の姓を名乗らせた。
 病で妻を亡くした重綱の後妻になった阿梅。幸村の娘としての誇りを胸に、「仁の人」と呼ばれていた幸村の姿を思い起こしながら優しい心を注いで家臣団や領民に尽くす。
 弟は一時「真田」姓に戻ったが、徳川方の追及が再燃化する。恩ある片倉家や伊達家に危機が及ぶのを避けるため、阿梅は再び弟に「片倉」を名乗らせることを決断した。
 ある日、自分たちを保護した理由を重綱に尋ねると、逆に「阿梅にとっての義とは何か」と問われる。重綱のいまわの際、阿梅が「皆の幸せを願うこと」と答える場面が胸に迫る。
 著者は1958年福島市生まれ。岩手大大学院修士課程修了。角田市で牛の肥育と稲作を手掛ける農家。2012年「チョコレートと青い空」で児童文芸新人賞受賞。著書に「命のバトン」「あきらめないことにしたの」など。
 くもん出版03(6836)0301=1620円。

河北新報
2016年11月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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