『脂肪の塊/ロンドリ姉妹 モーパッサン傑作選』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
名手による珠玉の「オードブル」
[レビュアー] 図書新聞
分厚い本ばかりありがたがられる昨今だが、さらっと読める短めの小説のほうが文庫本には向いているかもしれない。本書はおよそ十年の執筆活動の間で三百を越える中・短編小説を残した一九世紀フランスの作家、モーパッサンのアンソロジー作品集である。『脂肪の塊』はもちろんモーパッサンの代表作だが、残りの九篇は他の文庫本では現在読むことが難しい小説から選ばれていて、本書の特徴として際立っている。腰を据えて表題の中編二作の物語性を味わってもよし、十数頁しかない短編から軽妙な文体や場面展開を楽しんでもよし、まさに一流シェフ・モーパッサンの手によるオードブルのような本だ。今後、傑作選集として全三巻を予定している。(太田浩一訳、9・20刊、三三六頁・本体九二〇円・光文社古典新訳文庫)