「完全勝利」だったのか?

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死刑のための殺人

『死刑のための殺人』

著者
読売新聞水戸支局取材班 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784101348346
発売日
2016/10/28
価格
605円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「完全勝利」だったのか?

[レビュアー] 図書新聞

 2008年3月に茨城県土浦市で9人を殺傷した金川真大。2013年、29歳で死刑執行された。言い残した言葉は「完全勝利」。死刑になるためだけに多くの人を殺した金川。取材班は、「新しい犯罪」という特殊性に目を奪われることなく、金川という人間そのものに触れるために面会を繰り返し行った。心の闇と言ってしまえば簡単だが、闇を抱えていない人間などいない。そこから目をそらすか、そらさないか。取材班はそらさなかった。結局、解答は得られず、葛藤が残った。しかしそれは徒労ではない。執念にも似た努力に心を揺さぶられ、死刑の意味を問わずにはいられないだろう。金川事件の3カ月後に加藤智大が秋葉原で凶行に及んだことを付記しておく。(11・1刊、三三四頁・本体五五〇円・新潮文庫)

図書新聞
2017年1月1日号(3285号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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