「予兆はあったのだ」で始まる。先日亡くなった世界初の女性エベレスト登頂者、田部井淳子さんが、がん再発から亡くなる直前までを自身の手で記録した。
闘病記でもあるが、驚くのは抗がん剤やガンマナイフという言葉と並んでつづられる、その間の生活ぶり。国内外の山に登り、講演をこなし、東北の高校生の富士登山プロジェクトを引っ張り…。パワフルに普通に、家族や仲間と暮らしていたのだ。亡くなる5日前には「みなさん本当にありがとう!!」と病室でメモに書いた。
山の同志でもあった夫の政伸さんが書いた章、「淳子のこと」に落涙。(文芸春秋・1400円+税)
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2017年1月8日 掲載
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