沖縄VS.安倍政権 宮里政玄 著

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沖縄VS.安倍政権 : 沖縄はどうすべきか

『沖縄VS.安倍政権 : 沖縄はどうすべきか』

著者
宮里, 政玄, 1931-2019
出版社
高文研
ISBN
9784874986080
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

沖縄VS.安倍政権 宮里政玄 著

[レビュアー] 田仲康博(国際基督教大教授)

◆対米自立で築く要塞

 かつて沖縄の反基地運動の敵手は米軍であり米政府であった。しかし、ここにきて状況は大きく変わりつつある。本書のタイトルが端的に示しているように、いま沖縄の怒りと抗議の矛先が向けられているのは、アメリカではなく、むしろ日本政府の方なのである。

 宮里は、安倍政権の外交政策がアジア情勢の変化とそれに起因する米中関係の深まりに追いついていないことを指摘する。中国の台頭に対して従来のタカ派的な戦術では対処しきれなくなったアメリカは、経済や軍事の面で中国との関係を強化する方向に政策を転換した。

 その傍らで安倍政権は未(いま)だに中国脅威論に基づいて沖縄の要塞(ようさい)化を押し進めている。宮里は、日本政府が基地強化の理由にあげる海兵隊の抑止力や沖縄の地理的優位性には根拠がないと具体例をあげて批判する。そもそも海兵隊は日本防衛のために駐留しているのではないのだ。

 安倍政権の頑迷さは、じつは計算されたものではないのだろうか。この点において、対米追従と批判されがちな安倍政権にはむしろ「対米自立」の傾向があるとする宮里の指摘は重要なものだ。沖縄における自衛隊の前景化が彼の説を裏づけている。

 新基地建設に反対する沖縄の人々が相対しているのは沖縄防衛局や機動隊員であり、その背後にいる安倍政権なのだ。

 (高文研・1620円)

<みやざと・せいげん> 1931年生まれ。政治学者。著書『日米関係と沖縄』など。

◆もう1冊 

 佐藤優著『沖縄と差別』(金曜日)。沖縄に対する差別が背景にあるとの視点で新基地建設問題の本質に迫る論集。

中日新聞 東京新聞
2017年1月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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