二編のミステリが、中央の袋とじで解決!『ダブル・ミステリ 月琴亭の殺人 ノンシリアル・キラー』芦辺拓

レビュー

6
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ダブル・ミステリ

『ダブル・ミステリ』

著者
芦辺拓 [著]
出版社
東京創元社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784488027414
発売日
2016/12/21
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

二編のミステリが、中央の袋とじで解決!『ダブル・ミステリ 月琴亭の殺人 ノンシリアル・キラー』芦辺拓

[レビュアー] 西上心太(文芸評論家)

 ビル・S・バリンジャー『歯と爪』、スタンリイ・エリン『鏡よ、鏡』、島田荘司『占星術殺人事件』など、真相部分を袋とじにした作品がときおり登場する。昔は返金保証とセットの場合が多かったが、それがなくともマニア心が刺激される仕掛けであるのは間違いない。

 本書『ダブル・ミステリ』はさらに一段と趣向を凝らした作品である。すなわち右開き縦書きの「月琴亭の殺人」、左開き横書きの「ノンシリアル・キラー」、両者に挟まれた袋とじの解決編という三つのパートに分かれているのだ。折原一『倒錯の帰結』も似た構成だったが(ただし両パート縦書きのため後ろ側は天地逆に印刷されていた)。

 縦書きパートは孤島ミステリだ。満ち潮によって道路が水没し、偽手紙によって集められた五人の男女は島のホテルで一夜を明かすことに。そしてその夜、メンバー全員に恨まれていた六人目の男が殺される。そして状況から最有力容疑者となったのは、森江春策その人だった。

 横書きパートは、独立系ニュースサイトの女性記者によるウェブサイトの隠しコンテンツである。その文章の中で、彼女の元恋人をはじめとする周囲の人間に相次いだ《事故死》と、電車内で起きたある死亡事件の顛末が描かれる。

 各パートで描かれた死の真相と、二つの物語の関連を見抜ける読者はまずいないだろう。ミステリ作家たちが長年かけて磨き上げてきたフェアプレーの精神を含む約束事が多々あるが、本書は堂々とそれを逆手に取っているからだ。といって解決編をよく読めば、作者の試みがアンフェアではないことがわかる。この見事な綱渡りは一読の価値あり。

光文社 小説宝石
2017年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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