行間到る処青山有り、議論百出の書/青山繁晴×百田尚樹『大直言』

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大直言

『大直言』

著者
青山 繁晴 [著]/百田 尚樹 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103364139
発売日
2017/01/31
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

居島一平 行間到る処青山有り、議論百出の書

[レビュアー] 居島一平(芸人)

「真相深入り! 虎ノ門ニュース」の司会進行を承って、ほぼ二年近くになりました。

 スカパー!やニコ生、ユーチューブやアベマTV等で見られるこの番組は月曜から金曜までの毎朝八時より二時間の生放送。日毎に変わるコメンテーター陣は各界一流の専門家の方々とはいえ、というかだけに、メールを寄せて下すった視聴者の言を寸借すればどなたも“ボスキャラ”のような濃厚かつ強烈な個性の持ち主ばかりです。

 なにしろO・A(オンエア)開始後息もつかせぬ内に「地球は温暖化などしていない」「全てのリサイクル運動は無駄、むしろ有害」「憲法九条こそが憲法違反」「韓国は自国の歴史ごと整形手術している」「『国の借金一千兆円、国民一人当たりの借金八百万円』は完全に大嘘」……どれひとつとってもいわゆる地上波のメディアでは途端にピー音が入るか放送事故になりかねないような主張の数々が、ここでは歯に衣着せぬどころか琺瑯質ごと削る勢いで飛び交いまくります。横で拝聴している私のような、日頃テレビや新聞が垂れ流している“世間の常識”にどっぷり首までとは言わねど半身浴程度は浸ってしまっている人間にとって毎回、脳髄ごと引っぱたかれる思いの日々なのですが、中でも突出した存在感なのが月曜の青山繁晴さんと火曜の百田尚樹さんといえましょう。

 おととし戦後七十年目の夏に、番組特別企画として行われた両氏の対談「終戦の日と日本人」を軸に更に重ねられた議論がこのたび『大直言』と題し書籍化されました。活字の形で読み進めて改めて際立つのは、僭越な表現ですがお二人の発想の向日性です。

 いまだに巷で散見する、徒(いたずら)に日本の将来をひたすら暗く悲観的に捉え、現状の分析から負の要素しか導き出さず、ではどうするかの代案は何ら具体的に示さぬまま嘲笑的に突き放す。これが平気で許されるのがある種の大学教授や評論家だとすれば、両氏の討議は遥かに遠い所で展開されます。何より大事なのは、読んでいてワクワクすること(子供か!)。現時点ではどれだけ打開困難な現実の諸相を語っていても、お二方の話には未来に希望を失わぬための処方箋が力強く添えられていることです。

 今更のご挨拶ですが私は本来、年齢は若干熟れていこそすれ知名度からして全く売れていない一芸人に過ぎず、報道番組のキャスター(苦笑)役なぞお門違いも甚しい筈でした。そのせいか初期には私への罵詈雑言がネット上で怒濤の如く押し寄せましたが、最初に敢然と擁護して下さりかつ今に至るまで決して素人扱いせず接して頂いているのも青山さんです。だから御礼、で申すのではありません。たとえ思想信条の異なる相手でも攻撃的に論破するのでなく包容的に臨む姿勢、本番中に拉致問題に言及して落涙された瞬間、多岐に亘るご専門分野で特にメタンハイドレート――日本が自前の天然資源に恵まれぬとは全くの出鱈目だと全身で説く――様々な青山さんの醸し出す本物の「熱」と「志」は、本書の行間にも漲り渡っています。

 いっぽう百田さんは、次々と世に問われる作品の無類の面白さは当然のことながら、ご本人の語り口も負けず劣らず楽しい方です。自由奔放に広がる話題はボクシング、囲碁、クラシック音楽から動植物の秘められた生態にまで及び興味深く多彩なのですが、そんな百田さんが担当される火曜の“喋るコラム”風コーナーでの一幕を最後に少し自慢めきますがお許しを。

 あるニュースに触れて「僕は超能力とか超能力者っての、一切信じないんですわ。胡散臭い!」と切り出された百田氏。ふだんMCとしての私は徹底的に聞き役を貫くことを自らに課しておりますが、この時ばかりは「お言葉ですが百田さん。数多くの小説で、文章の、言葉の力だけで紡がれた物語で、何百万もの読者を感動させる。これが超能力でなくて何でしょう。ご自身は立派な超能力者じゃないですか?」すると満面の笑みで「ハイ、そうですね。超能力は、あります!」

 そんなお二人の魅力が肉汁たっぷりにつまった一冊です。映像抜きでも十分、ご堪能下さい。

新潮社 波
2017年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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