「GIRLS/ガールズ」のレナ・ダナムによる全米ベストセラー

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ありがちな女じゃない

『ありがちな女じゃない』

著者
レナ・ダナム [著]/山崎 まどか [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784309207193
発売日
2016/10/21
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

人気海外ドラマの才女が放った全米ベストセラー

[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)

 レナ・ダナムは86年生まれのアメリカの女優、作家、脚本家、プロデューサー、監督である。人気連続ドラマ「Girls/ガールズ」の製作・監督・脚本・主演を務め、ゴールデングローブ賞も受賞している。しかし、このプロフィールだけ見ても、どんな人物かは全くわからないであろうと思う。わかろうとしないまま、読んでみることをおすすめする。

 これは、私からすれば5歳年上のお姉さんの、赤裸々な日記。でも、世の中からすれば若い女の、若い若いエッセイ。女子高生、女子大生、ときめき真っ盛りの若い女の内面吐露と聞くと、こんなイメージが湧くかもしれない。初潮に戸惑う少女時代、処女であることに悩む高校時代、セックスに悩む大学時代。女子ならではの経験、性体験の告白。そんなあれこれを、覗いてみたら―彼女があくまで1人の人間であって、幻想の「女」など存在しないとわかるだろう。

 随分エキセントリックで「特別」な女なのだろう、と思う人もいるかもしれない。しかし、そもそも、存在しないのは幻想の「女」のほうだ。彼女は存在している。リベラルで裕福でアーティスティックな家庭で育ったレナは幼少期から抑うつ的で、強迫性障害も伴う不調に悩まされていた。才能が発揮されたのは大学時代からだ。

 誰もが持っている痛々しい過去について―愛おしいけれど、世間にさらけ出すことは憚られる、まだまだ滲(し)みる古傷を彼女は率直に記していく。どうせありのままの自分をさらけ出すなんてできない、というエクスキューズも軽妙に、幼い頃からの親友だってきっと知ることのできない1人の人間の、おしゃべりからはこぼれ落ちてしまう本当に知りたいことを彼女は教えてくれる。真剣なふりして話さなきゃいけないけれど、本当はくだらない出来事、とか。

 レナは完璧じゃないし、私も完璧じゃない。ありがちな女じゃない。

新潮社 週刊新潮
2017年2月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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